先週の土曜日に、cocoaruでブクブク交換が開催された。

ブクブク交換とは参加者がテーマに沿った本を持ち寄り、その本を紹介する。他の人たちの本の紹介を聞いて、自分が気になった本と自分が持ってきた本を交換する、というイベントだ。

ルーム・トゥ・リード関西チームさん主催で、ココアルを使って開催されている。ココアル開催は先日で3回目。僕も楽しいので毎回参加させてもらっている。(いつもありがとうございます。)

今回のブクブク交換のテーマは「新生活・新学期」ということで、僕は夏目漱石の『坑夫』という小説を持っていった。ちょうど先日、読んだところだったので、タイムリーな感じのテーマだった。(『坑夫』を読むのは2回目。個人的には夏目漱石の中では一番好き。)

数年前からちょくちょく夏目漱石を読んでいる。雑なまとめ方かもしれないが、だいたいの漱石の作品の“頭いい男子がなんかウジウジ悩む”のがウザくて好きだ。村上春樹みたいに「やれやれ」とか言わずに、ウジウジしている。

『坑夫』の主人公もウジウジしている。最初の30ページくらいはとにかくウザくて最高。

作品紹介
恋愛事件のために家を出奔した主人公は、周旋屋に誘われるまま坑夫になる決心をし、赤毛布や小僧の飛び入りする奇妙な道中を続けた末銅山に辿り着く。飯場にひとり放り出された彼は異様な風体の坑夫たちに嚇かされたり嘲弄されたりしながらも、地獄の坑内深く降りて行く……漱石の許を訪れた未知の青年の告白をもとに、小説らしい構成を意識的に排して描いたルポルタージュ的異色作。

というような感じで、主人公は“堕落の稽古”(作中の表現)を始める。炭坑内では、稽古を必要としなくても“堕落”している人がたくさんいる。”堕落“せざるを得なかった人もいる。主人公の価値尺度において”堕落“がとても似合わない人格者も、状況としての”堕落“をしている。

最後は炭坑から出ることになるのだが、たぶん主人公は炭坑に入る前後で変わっている。

「新生活」が始まっている。

でも『坑夫』は、この変化を劇的にいちいち描かない。

これこれ、こんなことがあった。衝撃を受けた。そして、僕は変わった。

そんな言葉は出てこない。ただ、淡々と話は進んでいく。

僕自身も「なんか自分も変わったなー」とかときどき思うこともあるが、何か劇的なことがあったかと言うと、これです!ということは思いつかない。

でも5年前とは考え方とかも変わっているような気もする。

『坑夫』みたいに、たぶんこの5年くらいでいろいろと経験して変わったのだろうと思うけれども、どの出来事が自分にどう影響してとかはよくわからない。

生活や仕事の環境は変わったけれど、その環境の変化が自身が変わったタイミングかと言われるとそうでもない。

こんなことをウダウダと書いている僕も『坑夫』の主人公と同じ、“堕落に稽古”を要するうさん臭い人間なのだろうと思う。

でも、自分のうさん臭さは嫌いではない。